写真は西千葉工作室に置かれているレーザー加工機
トンカチワークスの腕時計作りのワークショップでは、ケースの木材やガラス部分のアクリル切り出しに『レーザー加工機』を使っています。
『レーザー加工機』は機種によってサイズや出力パワーが違いますし、レーザーを作り出す方法によって得意な加工が違ってきます。今回は、一般的なシェア工房に置かれているCO2型(レーザー作り出す方法)、30W〜60W(出力の強さ)を前提に簡単に使える材料や使い方を説明していきますね。
切れる素材
こちらの機材、最も適する素材はアクリルだとよく言われます。それは、切断するための出力がそれほど必要なく、加工の精度も出やすいためです。また、精度は出づらいですが大概の施設で木材も切れます。
機種や置いてある施設の取り決めによっては、紙や革、スタンプ用のゴム板なども切ることが出来ますので、利用したい施設があれば予め確認することをお勧めします。また、プラスチックでも塩ビなど有毒ガスが出る素材は加工を禁止されている施設がほとんどです。
彫刻できる素材
上記の「切れる素材」に加えて、金属やガラスなどにも刻印することが出来ます。こちらも施設ごとのルールがあるので、使いたい素材が決まっている場合は問い合わせましょう。
使い方は?
デジタルツールなので、Adobe Illustratorなど幾つかのPCソフトを少しいじれるようになる必要があります。機材(ハードウェア)自体の取り扱いにも慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、数時間も触っていれば基本機能は使えるようになります。
– 加工の一般的な手順 –
Adobe Illustrator/2DCAD等でデータ作成
▼
専用ソフトで出力設定
▼
レーザー加工機の設定(加工する材料との距離合わせ等)
施設を利用する場合、大抵30分〜2・3時間の事前研修があります。また、時間貸しサービスとは別に、レーザー加工機を使った簡単なワークショップも開催されていることが多いですので、こういった機材を触ったことの無い方でも気軽に参戦できますよ。
機能は『カット』と『刻印』
レーザーカッターで出来ることは単純で、カット及び刻印です。カットは想像がつきやすいと思いますが、パズルのピースのようにパーツを切り出すこと。こちらがカットした素材です。
カットまでせず、段差や模様を刻むことも出来ます。こちらは裏蓋のハリネズミマークを刻印している動画です。
特に刻印の機能は工夫次第で加工出来る幅が広がりますが、カットに比べて大抵時間がかかります。外部施設で利用する場合、大体レーザーカッターは時間単価で貸し出しているので、大量生産をしたい場合は時間短縮の工夫も必要です。
焦げるのが弱点
素材をレーザー光線で焼き切るため、木材や革など炭化する素材は焦げます。ただ、アクリルなど炭化しないものは問題ありません。
切り出したパーツの表裏に付いたヤニは、MDF(木の集積材)などアルコールで取れる素材もあるようです。側面の焦げは、濡れティッシュなどでヤニを軽くとった後、紙やすりで磨きましょう。
また、ヤニがつくのが嫌な場合、あらかじめ素材の表裏にマスキングテープを貼ってから切り出すとヤニがつきません。
ただ、側面の焦げはあらかじめ出来る対策があまり無いため、切り出した後の作業中にどうしても手にヤニが付いてパーツ全体が汚くなっていきます。特に薄い色の素材はヤニが目立ちます。
————————–
余談ですが、ヤニや焦げが発生しない機材として、CNC加工機があります。
写真はORIGINAL MIND社の卓上CNC加工機
CNC加工機はレーザー加工機と同じデジタルツールですが、素材を焼き切るのではなく削り出すため焦げません。また、3次元データを削り出せるので、溝の深さなどの精度が格段に上がります。レーザー加工機に比べて時間がかかる点が難点ですが、自宅に置けるサイズ・価格(10万円前後)の機材も多いので、ながら作業(出力)が出来ると考えるとアリかも。。
こちらはトンカチワークスでも導入したので、後日レビュー記事を書く予定です。
————————–
さて、レーザーカッターの焦げですが、模様を入れたい時は逆に嬉しい部分です。革や薄い木にする刻印は、焦げた部分の色が変わることでより立体感を出すことが出来ます。
焦げに関しては、CNCで出せない加工です。
CNCとレーザー加工機、他の機材も含め良いとこ取りして加工していきたいですね。
精巧なものは別の機材を使おう!
また、レーザー加工機は高さ(z軸)に精度の必要なものにはあまり向きません。「高さ何ミリ掘る」という設定が出来ないので、出力やレーザーを当てる速さの設定を変えながらノギスなどで実際に削れた高さを測り、自分で適度な高さを導く必要があります。
更に場所によって密度が異なる木材などの素材は、平面(x,y軸)の精度もあまり出せません。例えばネジ穴。φ1.7mmで空けたければ、レーザー光線の幅分も焼き切れるので、その分を考慮する必要があります。また、素材の密度が一定でないので、多少のズレが生じます。
下の写真の材料に空いている小さな穴(約φ1.7mm)はレーザー加工機で空けたものですが、特に右下の穴が歪なのが分かるかと思います。
このような場合は、穴だけボール盤を使ったり精密な機材で空ける方が確実です。
レーザー加工機が使える施設
私達が実際に利用したことがあるのは、都立大学駅前のMaker’s Base Tokyoと浅草橋駅近くの浅草橋工房、千葉市にある西千葉工作室など。他にも都内にはたくさんの施設がありますし、郊外にもちょくちょくあります。こちらに関しては、千葉・東東京地区を中心に施設をまとめた記事を作成したので気になる方はチェックしてみてください。
今後もレーザー加工機のメーカー別や素材別の特性などをまとめた記事を書く予定です。
それでは、本日もトンカチワークスへのご訪問、ありがとうございました^^