【こちら】の記事を見てアルプス電気のハプティック製品群が気になり、昨日CEATECに行ってきました。最終日の閉館1時間前に滑り込みました。こちらがお目当のアルプス電気のブース。
ハプティック=触覚
聞きなれない言葉かもしれませんが、”ハプティック”とは触っている感覚を生み出す技術のことです。固い・柔らかいといった感触や、表面のツルツル・ざらざらといった質感、熱い・冷たいといった温度の感覚、そういったものを振動や電気的な刺激などで伝える技術です。
既におなじみになっているのが携帯のバイブレーションですね。これひとつとっても、昔に比べてどんどん振動が繊細になってきていて、研究が進んでいることが分かります。
ちなみに”ハプティック”というのはアルプス電気の商標で、一般的にはハプティクス(haptics)と呼ばれています。【こちら】に分かりやすい解説と海外の研究情報も載っていたので、気になった方は御覧ください。他にもハプティクス(haptics)で検索すると詳しい記事が出てきますよ。
出展されていたハプティック製品は4点
触感を伝える方法はいくつかあるので、その方法ごとに製品が分かれていました。
①ハプティックリアクタ
振動を伝える装置
②ハプティックパッド
素材表面の質感を表現する装置
③ハプティックトリガー
素材の固さを表現する装置
④ハプティックトリガー プラス
②と③を合体させた上に、温度も伝える装置
この4製品が横並びに展示されていたのですが、私のようにマイナビニュースでチェックしてきたのか、体験しようと並ぶ人がCEATEC会場の中でも一際多かったです。
振動で触感を伝える”ハプティックリアクタ”
こちらは今回のシリーズの中では最も初歩的な技術と言える、振動を使った製品。
デモンストレーションでは、ギターやドラムといった楽器の振動を体験しました。感触的には、携帯電話のバイブレーションで、楽器の振動を表現している感じでした。そのためか、他の3製品に比べると体験している方が少なかったです。
表面の質感を伝える”ハプティックパッド”
こちらは、写真下部のパッドの上を指でなぞることで、質感を体感できる製品です。
なぞった場所から電気的な刺激を与えられて、表面のザラザラ感・デコボコが感じ取れます。
触った時の印象は、電気刺激だと分かる少しピリピリした感じです。個人的には、少しマニアックですが、人間工学の実験などで使う『筋電計』を着けた時の感覚に似ていると思いました。アブトロニクスの小型版みたいな装置を着けた感覚・・と言ったら少しイメージしやすいでしょうか。
最初のデニムは全体的にザラザラした感じでしたが、タイルは境目が盛り上がったような表現に仕上がっていました。感覚的には、電気刺激をタイルの境目でより大きくしている感じでした。
社員さんによると、刺激の大小というより、電気の波形によって手に与える印象を変えているそうです。
モルタル、こちらはデニムより少し出っ張りが大きい感じ。
全体的に、電気刺激と分かるくらいなので、前の液晶画面が無ければ何を触っているのかさっぱり分からないレベルです。
クイズには良いかも?今後、電気刺激の精度を上げたり、タイルやモルタルの触った時冷たい感じとかが出せたらよりリアルになりそうだなと感じました。こちらの製品は既に実用化されているそうです。
固さ・弾力などを伝える”ハプティックトリガー”
こちらは写真下部の中央に隙間の空いたカプセル型の装置を摘んで押し込むと、素材ごとの固さが体験できるものです。
上のCGはクマ型のグミ。
カプセル型の装置を押し込むと、少し固くて弾力のある押し心地があります。
こちらは心臓を掴むイメージ。こちらは装置が勝手に鼓動のように動きます。
もうひとつの素材のサンプルはミニトマト。最初は押している手応えがあり、最後は手応えが急に弱まり、ミニトマトが潰れたイメージが伝わります。
このカプセル型の装置自体は硬質プラスチックなので、どの素材サンプルからも指の表面には軽くて固いプラスチックの感触が伝わります。3種類押し比べたら、固さや弾力の違いがよく分かりますが、社員さんによると男性は特に、その違いさえも感じにくい方が多いそうです。
装置で固さや弾力を段階的に変える技術自体はハイレベルだと思うのですが、まだまだ挑戦は始まったばかりなんでしょうね。2017年中に実用化予定とのことです。
温度も体感出来る”ハプティックトリガー プラス”
こちらが今までの3つの技術を組み合わせて、更に温度も体感出来るようになった製品です。
やはり一番人気で、待っている人の列も長かったです。
実際に手に持っているコップ型の黒い装置の両サイドにボタンが付いています。このボタンから振動・温度が伝わり、ボタンを押し込むことで先ほどのハプティックトリガーと同じようにモノの固さ・弾力が伝わります。
また、このデモでは使われていないのですが、ハプティックパッドで使われている電気刺激も内蔵されているとのことなので、素材の質感も表現することが可能なようです。
デモでは、まず水が注がれて、その振動が伝わってきます。その前後、冷たい水のモデルなので、ボタンから冷たさが伝わってきます。また、紙コップを傾けると画面のコップも傾いて水がこぼれます。
ボタンを押し込むと押し込んだ感覚があり、画面の紙コップがつぶれます。
また、湯飲みバージョンのデモもあり、こちらは画面の湯飲みにお湯が注がれると、実際の装置のボタンも熱くなります。こちらは2018年中に実用化予定だそうです。
感想:ここからがデザイナーの腕の見せ所
今回体験した4つの装置ですが、それぞれの技術を使って触感を刺激する方法を模索して、一般の方にも体感出来る形にしたことは素晴らしいと思いました。まだまだ実際の触感に近づける研究が必要とは思いますが、ここまでくるとそれぞれの技術を組み合わせるなりちょっとした工夫をするだけでも、更に触覚を刺激して実物を思い起こさせるような装置に進化するんじゃないかと思います。
特にこの装置の形がとても重要で、技術を組み合わせる程、それを表現する形の難易度が上がってくると思います。例えば最後のハプティックトリガー プラスの製品の形状でいうと、コップを連想させる形だけに、他の形に応用しづらい点があります。
その辺りが今後デザイナーの腕の見せ所になってくると思うと、私のような三流デザイナーにも、今後どう解決していくのかというワクワク感と、あわよくばその進化に関わりたい、という欲求を掻き立ててくれる展示でした。
来年はもっと進化した製品群が見られるはずなので、興味のある方は是非足を運んでみてください!
すけも来年は行くぞ!